ブラジル産冷凍鶏モモ肉の代わりを探している

ブラジル産冷凍鶏モモ肉を愛食している。
外国産の安冷凍肉の味が好きだという珍妙の嗜好があるわけもなく、ただそのコスパの良さに惹かれて買い続けていた。
昨年の夏頃には、近所のスーパーで2kg600円ほどだった。それが秋になると800円あたりに値上がりし、冬には1000円になっていた。冷凍鶏モモ肉で輸入に関する不安定さを実感する。コンテナ不足、発着便の減少、世の中は自分の知らないところでもコロナウイルスの影響を受けている。
それでも他の肉を買うよりは安上がりなので、値上がりしてもブラジル産冷凍鶏モモ肉を買い続けていた。けれども先日スーパーに行ったところ、ブラジル産冷凍鶏モモ肉が陳列されていた場所には、その姿がなく、その代わりに冷え切った表情を浮かべてこちらを見ている国産鶏モモ肉が並べられていた。誰だお前らは。僕のブラジル産冷凍鶏モモ肉はどこに行った。
そしてその価格も1400円ほどになっていた。昨年の夏に比べて二倍もの値段となってしまっている。僕は国産鶏モモ肉の前に膝から崩れ落ちて慟哭した。国産鶏モモ肉が僕のことを冷めた目で見ている。そのまま買わずに帰った。
これはまずい事態になった。食べるものがなくなってしまった。安く肉を購入できる場所がないかと考えをめぐらせていると、そういえば近所に業務スーパーがあったことを思い出した。
業務スーパー。名前の通り、居酒屋などの飲食店が、自分の店で提供するための食材を買うための店、というイメージがあった。けれど話を聞くと普通にそこらへんの主婦も買いに来るらしい。
業務スーパーには行ったことがないけれど、とてつもなく安い、という話をよく耳にする。もしかしたらそこになら外国産の冷凍鶏モモ肉も置いてあるかもしれない。その他にもメインとなるような腹持ちの良いものが安く売られているかもしれない。
業務スーパーまで原付を走らせた。到着するやいなや、肉の冷凍品が並んでるコーナーに走って外国産の冷凍鶏モモ肉を探した。けれど見つからない。国産の冷凍肉が並んでいるところの端っこに不自然にぽっかりと物が置かれていない場所があった。そこを覗き込むと「外国産冷凍鶏モモ肉は入荷未定です」とA4用紙が貼られていた。スーパーを変えれば輸入問題が解決するわけではない。そんなこと、本当ははじめからわかっていたはずなのに。見たくないものを見ないようにしていた自分の愚かさを、痛いほど感じる。
仕方がないので何かコスパ最高のものはないかと探していると、500g160円の肉だんごがあった。これは凄い。その肉だんごの鶏肉の含有量がどれくらいかは定かではない。他にも肉以外のパン粉やでん粉などといったつなぎや、玉ねぎなどが入っているようだけれど、一食に半分食べても80円。250gの肉だんごを毎食、何の恨めしさなく食べられると考えたら、魅力的だった。僕は2セットをかごのなかに入れた。あとは僕が日々更新を楽しみにしてるオモコロチャンネルでも紹介されていた白菜キムチを買った。1kgのキムチが300円で買えるなんて、これは本当に凄いことだと思う。
家に帰って、白米を炊く。これは親に話したところ驚かれたのだが、僕は近所のスーパーで最安値の5kg900円の謎の米を食べている。当然この安さで無洗米であるわけはないけれど、研がないでそのまま炊いてる。正直研いで食べても研がないで食べても違いがまったくわからない。だったら面倒な工程はないに尽きる。
炊き上がった米に、肉だんご数個とキムチを適量乗せる。それにマヨネーズをどばどばかけて食べる。うまかった。毎食これでも別にいい。肉だんごは、安いだけあってそれほど肉肉しい感じはない。けれど別にいい。キムチはあっさりしていて辛さもそこまで高くはないけれど、きちんとキムチらしい味わいに満ちてる。うまい。
ブラジル産冷凍鶏モモ肉が入手困難になってしまったけれど、僕は業務スーパーの肉だんごとキムチだけで生を長らえさせることができるかもしれない。コロナ禍において、輸入の不安定さでどうなるかと思った僕の日常も、何とかなるかもしれないと胸を撫で下ろす。