20230423

 一日を最大限に過ごそうと思い、起床してすぐにコメダ珈琲に行った。小説を書くつもりで、背負ったリュックサックの中にはノートパソコンを入れていた。コメダに着くと、店員に「カウンターでよろしいですか?」と言われた。本当はテーブル席がよかったけれど、ひとりだからしょうがないかと思い承諾すると入り口のすぐそばのカウンター席を案内された。席に座り、注文を済ませてノートパソコンを出して開いたけれど、どうも視線が気になってしまいすぐに閉じた。僕の背後にもテーブル席があり、どこからでもよく見えるような席だった。僕のパソコンのディスプレイなんて誰も興味がないし、覗き込む物好きな人間なんていないとは思うものの、そう簡単には過剰な自意識を抑えることはできない。運ばれてきたモーニングを食べていると、ひっきりなしに入店を知らせる鈴の音と案内する店員の声が聞こえてきた。何人目かの客のときに「カウンターでよろしいですか?」と言われた客が「テーブルで」と言うと、そのままテーブル席に案内されていた。なんとなくひとりだとカウンター席以外は座れないと思い込んでいたけれど、言えば案内してくれるのだと知った。モーニングを食べ終わっても、入り口近くのカウンター席ではどうも作業をする気にはなれず、アイスコーヒーを飲みながらKindleで小説を読んだ。昨日しばらく読んでいた中上健次の秋幸三部作が読み終わり、そういえば一月の芥川賞受賞作をまだ読んでいなかったと思い出したので、文藝春秋の電子版を購入して読み進めている。今回の芥川賞はどうやら二作同時受賞で、そうなると受賞作掲載の文藝春秋がますますお得に感じる。騒がしい店内で小説を読み続けていたけれど、当初の目的は朝のうちから小説を書きはじめ、理想的な一日のスタートダッシュを決めることだったと思い出して、アイスコーヒーを勢いよく飲み干し退散した。帰り道で僕は喫茶店で小説を書いたりするのはあまり向いてないなと思った。少なくともカウンター席では周囲の目が気になるし、それはテーブル席でもあまり変わらない予感がする。この頃ちっとも小説を書いていないけれど、喫茶店よりは自宅のほうが向いている気がする。いちばん集中できそうなシチュエーションはインターネット環境がまったくなく、手を伸ばせばすぐに壁に触れそうなほど狭い部屋に閉じ込められるという状況かもしれない、と思った。もう喫茶店に小説を書きに行くことはないだろう。やはり家が至高、というか家で書くしか自分にはないと思って、コメダから帰宅して意気込んだけれど、気がつけば寝る時間で、たっぷりと時間は用意されていたはずなのに1000文字程度しか書かなかった。書いては全部消し、書いては全部消し、と完成することのない小説を書き続けてきたけれど、今回はいい加減完成させてどこかの新人賞に送りたいものだ。毎回そう思っているし、毎回今回こそは本気と思っている。