しもやけの対抗策としてユニクロのヒートテック五本指ソックスを信じていけ

右足の指の表面が虫についばまれているようなむずがゆさ、そして痛みを感じる。

右足を見てみる。足の指というのは、想定していた長さよりもずっと長いように思えて、見るたびに不思議なおかしさを感じてしまう。

人差し指から小指にかけての指がにぶい黒さで変色している。足の指に人差し指があるというのも変な気持ちになる。足で人を指す無礼な人間をこれまでの人生で一度も見たことがないからだ。

この変色は、つまり血行が悪いのだ。しもやけである。去年から季節の変わり目になると同様の症状があらわれていた。去年は根気でそのかゆさと痛みに耐えてやり過ごしていたけれども、何か簡単な解決策があるのなら、それを講じたい。インターネットで『足 しもやけ 対策』と検索窓に打ち込んでエンターキーを押す。インターネットはもったいぶることもなくすぐに解決策を教えてくれる。どうやら五本指ソックスというものがいいらしいということがわかった。五指が独立しているので暖まりやすく、そうしてむれにくいからしもやけ対策にはぴったりとのこと。

人生で五本指ソックスを履いたことは一度もなかった。大昔に兄がそれを履いているのを目にしたことがあるけれど、裸足のときと意味合いは変わらないはずなのに靴下を履いている状態でうねうねと五指が動く様はどうしてか不気味に思えた。

靴下をかえるだけで症状が良くなるのならと思い、ユニクロにおもむき、五本指ソックスを三セット購入した。レギュラーな五本指ソックスでも問題はないと思うのだけれど、血行を良くすることが目的であるので、より保温効果がありそうなヒートテックのものを購入した。

さてはやる気持ちを抑えつつ帰宅して履いてみると、どことなくひんやりとした冷たさを感じた。思えば十年前にヒートテックのタイツを履いてコンビニバイトに行ったことがあったが、レジの前でずっと足に寒さを感じてしまい、がくがくと震えていたことがあった。思い起こしてみて驚いたが、これはもう十年前の記憶なのか。記憶とは不思議なもので、忘れてはいけないことを忘れてしまうこともあるし、このようなどうでもいいことをずっと覚えてしまっているということも多々ある。

ヒートテックの上半身用のインナーはいつまでも着ていられてるのだけど、タイツだけはどうも受け付けられなくてそれ以来履いていない。冷たさを感じるというのはヒートテックの性質上仕方がないことで、体温を吸収して発熱保温をするので、そう感じてしまう場合があるらしい。タイツは足首から太ももにかけてという体温があがりにくそうな部分であったからずっと寒さを感じてしまっていたのかもしれないけれど、足先は比較的体温があがりやすいのか、すぐに気にならなくなった。それに靴下のほうが布地がしっかりとしていることも要因のひとつだろう。

五本指ソックスを履いて、日々を過ごしていると足の指にかゆさと痛みを感じる機会が減った。足の指はまだ変色したままであるけれど、どうやら効果があったらしい。靴下をかえるだけで生活の懸念がひとつなくなるなんて、これほどすばらしいことはない。これからは五本指ソックスを履いて生きていこうと思った。

ヒートテックの五本指ソックスは良いものであったけれど、弱点もあった。それは一日履いただけで毛玉だらけになってしまうことだ。材質上仕方のないことなのかもしれないけれど、幾分みすぼらしく見える。とはいえ効果にかわりはないし、もっぱら自宅用の靴下なのでひとり暮らしの身としては誰にも見られることはないから良いのだけれど。

それと洗濯の問題もある。僕は基本的には同じ形、同じ色の靴下しか履かないと決めていた。というのも、洗濯をした際に洗濯槽のなかで水をはらんで重たくなった衣料を仕分ける際に靴下がすべて同一のものだったらペア捜しゲームをしなくて済むからだ。五本指ソックスの場合はそうはいかない。当然のことであるが、右足用と左足用で形が異なっているため、洗濯槽から右足の靴下をすくいあげたのなら、左足の靴下を探さなければいけない。もしかしたら普通の靴下でも右足と左足で微妙に形状が異なっているのかもしれないけれど、これまでの生活で一度も気にしたことはなかった。さすがに五本指ソックスで気にしないわけにはいかないので、洗濯時の手間がひとつ増えたことは気がかりである。